介護者の負担軽減!食事用エプロンの選び方
人間は生きる為に、食べるのですが、それだけではなく、高齢者にとっても、私達にとっても、食事は生きていく上での、楽しみのひとつです。
私達は当たり前に時間が来れば、お腹が空けば、普通に食事を摂ります。
一方、高齢者にとっては、私達とは少し違い、時間が解らなくなったり、私達のようにお腹が空かなかったり、摂取に時間を要してしまったりと、食事は体力を消耗する、疲れる作業のひとつでもあります。
何故、食事が疲れてしまうのか
- 箸で掴んだ、スプーンですくった食事を、こぼさないように口腔内に運び入れる
- 口腔内に入った食事を噛み砕く
- 口腔内で飲み込める量の食事を噛みながら、舌を使って纏め、口腔内奥に送る
- 更に、飲み込む準備をし、タイミングを計ってようやく飲み込みます
私達は、そのようなことをわざわざ考えて食事はしませんが、高齢者にとって食事を摂ることは、それ相当の体力が必要です。
体調を崩して臥せている方の食事がすすまない理由のひとつとして、お食事をすることで体力を消耗する、疲れるからでもあり、既に体調不良の状態では食事をする気力、余力が減退状態といえます。
更に、飲み込んだ食事が消化して排泄されるまでも、同じように体力が必要です。
介護保険法 第一章 総則
(目的)
- この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に……その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を……
自力摂取のすすめ
食事を、目で見て楽しみ、自身で食べたい献立を選び、自身のペースで食事が出来るということは、どれだけ慣れた方から食事介助を受けるより、食事を楽しむことが出来ます。
最初の一口から最後の一口まで、全介助での摂取介助を受けている方の何パーセントかは、もしかしたら、ご自身で食事が摂れる可能性があります。
- スプーンの上に食事を乗せて差し上げれば、食べることが出来る
- 食事開始の最初の15分程度であれば、ご自身で食べることが出来る
- 箸やスプーンを持ちやすい物に替えれば、自分で食べることが出来る
- 食器が滑らなければ、おひとりで食べることが出来る
何故、全介助してしまうのか
時間が掛かる、食事をこぼしてしまうと言う理由で食事を全介助していませんか。
先に挙げた、「自立支援とは出来ることはご自身でやっていただき、出来ないことを私達介護者が支援する。」の観点から外れてしまっています。
一口がゆっくりとなってしまい、時間が掛かったり、スプーンですくった食事がこぼれたり、口腔内に一旦は入ってもこぼれたり、垂れ流れたりして、エプロンや衣類が汚れてしまう。
エプロンを洗ったり、汚れてしまった衣類を着替えたり、洗濯物が増えたりと再び介助者の負担となってしまう。
更にそれが、毎食となってしまうと介護する方のお気持ちも、もちろん理解できます。
では、どうしたら介護者の負担が軽減できるのかを考えてみましょう。
負担軽減!使い捨て食事用エプロン+見栄えも考慮
施設でも外出レクリエーション等で、施設外で水分や軽食を摂る際に使用しています。
ポリエチレン素材の使い捨て用エプロンです。透明ですので見栄えもよく、こぼれた食事をキャッチするポケットが付いたものもあります。
食後は丸めて捨てるだけなので、食べこぼしで汚れた衣類を着替えたり、洗濯したりの時間や手間を考えると、使い捨てエプロンの使用を検討してみても良いと思います。
また、介護施設でよく見掛ける大きなエプロンが、どうも苦手という方にもおすすめします。
食べたいという意欲を低下させてしまう
ご自身で召し上がれる方は、自力摂取を続けましょう。
自身でスプーンで食事をすくうことや、口腔内に食事を運ぶことは、ご自身で食事を摂ろうという食べる意欲があるから出来ることです。
出来ることを介護者が行うことで、食事時間や片付けを含めて確かに早くなりますが、本人の出来ることを奪うことでもあり、これまで出来ていたことが、次第にできなくなってしまいます。
どなたでも「可能であれば自分で食べたい」という気持ちはあると思います。食べさせてもらうより、自分で好きな献立を選んで、自分のペースで摂る食事の方が断然美味しいのではないでしょうか。
自分で食べることで、やはり疲れてしまうため、利用者様本人が介助を求める方もいらっしゃいます。
そのような時は、開始して手が止まるまでは、何とか摂取のお声掛けを行いながら、少しでも自力摂取を促しましょう。
食事用エプロンを選ぶ時の注意点
エプロンのサイズ
えりもとだけの小さ目エプロンや、腹部までの長さがあり、こぼれた食事が床に落ちないように、ストッパーとなる折り返しのあるエプロン等、機能も様々です。
また、太もも付近までの長さがあり、エプロンの下の部分をテーブルとお膳の間に挟み、やはり食事が床に落ちないよう対応できるものや、肘(ひじ)や袖口の汚れ防止のための、袖付きのエプロン等、使用する方のニーズに合ったものを選びましょう。
無駄に大きいエプロンは、自尊心を傷つけてしまうこともあるので注意が必要です。
介護施設でよく見掛ける食事用に使用するエプロンはとにかく派手だったり、大き過ぎたりで、本人様に合っていないものを使用されていることがあります。
食事用エプロンは、「食事が上手に食べれず、衣類を汚してしまうから使う」は間違えではないですが、毎日のリハビリに励まれて、ようやく自力摂取が可能になったお客様等にとっては、馬鹿にされているように感じ、立腹され食事を拒否する方や、本人様は何も言わなくても、プライドが傷付いている方もいらっしゃいます。
特に施設に多い、食事用エプロンは、大きいもののみの、ひとくくりになりがちですが、本人様に合ったものを選びましょう。
ご家族様や介護職員が全介助で食事を召し上がっていただいているのであれば、大きなエプロンは必要ないので、タオル地やガーゼのハンカチや、ハンドタオル、大きくてもフェイスタオルを、えり元にそっとかける程度で十分です。
介助時、注意することは、一口量が多かったり、嚥下機能低下から、いったん口腔内に入った食事がなかなか飲み込めず、溜め込んでしまうため開口と同時に、口腔内から水分や食事が唾液と混じって垂れ流れてしまった時、スプーンで垂れ出た食事をすくい、再度、口腔内に入れる介助者が稀にいます。お口の周りをスプーンですくう行為は、介助されている方にとって、非常に不快な行為ですのでやめましょう。(お口の周りは、食器ではなくお顔の一部です)おしぼりで、そっと拭って下さいね。
食事用エプロンの防水と撥水について
加工の内容 | 効果 |
撥 水 加 工 | 水を はじく |
防 水 加 工 | 水を 防ぐ |
撥水加工のメリットとデメリット
水分等をはじいて、丸い玉状になって滑り落ちるイメージです。通気性もあります。デメリットは使用を続けるうちに、その効果は比較的早くに落ちてしまうことです。
防水加工のメリットとデメリット
メリットは水を通さず、その効果が長く続くこと。デメリットは蒸れること。
防水加工がなされたレインコートで経験したことはないでしょうか。脱いだあと、内側がしっとりと蒸れていますよね。
ですが、食事の時間に使うエプロンであれば、着るものでもありませんし、長時間の装着ではなく、食事時のみの一時的な使用であるため、蒸れを気にする必要はありません。
撥水機能に比べ比較的長く効果はありますが、生地の摩耗でその機能はいずれ劣化します。
食事用のエプロンとして必要な機能は、衣類を食事で汚さないことであるため、防水機能がついたものを選ぶことをおすすめします。
介護施設での食事用エプロン
施設では食事時、食べこぼしがある方にエプロンの購入をお願いしたり、または施設でお勧めのものを購入ということもあります。
施設でのエプロンの管理方法
食後、エプロンはご利用者様から取り外し、食事や汁物(トロミ付きなど)を流水で洗い落とします。
そのあと、洗濯機で洗います。殆どの施設では乾燥機に入れていると思いますが、乾燥機を使用することで、マジックテープ部や、エプロン生地、撥水加工が少しずつ劣化していきます。
3ヶ月から長くても半年以内で撥水機能はすっかりなくなりエプロンを通して衣類が濡れてしまうようになり、新しい物を購入となります。
どうしても乾燥機を使用することで、エプロンの生地が傷む原因になりますが、介護施設では使用後のエプロンは、一枚ずつ最初に与洗いした後は一緒に洗濯機で洗いますので抗菌作用にも考慮して乾燥機を使用しています。
介護現場でたまに見かけますが、男性ご利用者様が花柄の大きなエプロンを、早々と装着されていることがあります。
エプロンは食事が配膳される時、もしくは少し前に装着しましょう。また、共用のエプロン等を使用する際も、柄や大きさには配慮を。
食事の時間はとにかく職員にとっては忙しい時間になります。誤嚥事故や服薬ミスなど、あってはいけない危険な事故を起こすリスクが高い時間帯です。
ですが、それを理由に、早々とご利用者様にエプロンを装着してはいけません。もっと分かりやすくお伝えすると、食事用のエプロンに限らずですが、職員や施設の都合で、お客様に負担やご迷惑をかけてはいけないということです。
お食事が配膳されたお声掛けをし、エプロンの装着を行うことで、「今から食事をする」ということが伝わりますし、お声掛けをしながらエプロンを装着する時間は、長くても15秒もあればできることです。
ただ、水分摂取等をお食事前に行っている場合においては、その限りではありません。
施設に入居予定の方へ
施設入居時、食事用エプロンについて施設に確認してみましょう。
介護用品はいろいろあって選ぶのが難しく、お任せされることも多いです。私なりに、その方に合うデザインや機能を選択していますが、カタログを本人様やご家族様にお見せして、選んでいただくこともあります。
また、施設で使用するエプロンには、特に規定はない施設がほとんどなので、入居前にお好みのエプロンを準備されても良いですね。
私が介護の仕事を始めた頃は、大きな柄のエプロン一択の時代でしたが、今回、ご紹介したエプロン以外にも、いろんな機能を備えた豊富な種類のエプロンがありますので、是非チェックしてみて下さいね。