介護施設の食事と提供出来る食事形態(お食事の形状)
年を重ねると、いろんな理由があって普通のお食事を召し上がることで咽せてしまったり、噛み砕いて、飲み込むことが大変になってきます。
それでも、食べやすい大きさだったり、噛みやすい軟らかさだったり、工夫次第で咽せなく美味しく食事を楽しむことができるんですよ

食札(しょくさつ)とは

いつまでもお口から美味しく食事ができるように適切なお食事の形態で提供しています。
お膳に乗せての提供が基本になり、食事札がセットされています。食事札を確認しながら配膳しましょう。配膳ミスは誤嚥に繋がります。声を出してお名前をお呼びしながら配膳して下さいね。
配膳ミスが誤嚥に繋がるとはどういうことか
例えば、A様には常食(嚥下状態に問題がない方に提供する一般のお食事)B様にはミキサー食(嚥下機能の低下がある方向けの食事をミキサーに掛けたお食事)を提供します。
配膳ミスで誤嚥(ごえん・飲み込んだお食事が食道ではなく、気管に入る)するとはどういうことかと申しますと、ミキサー食のB様にA様の常食が配膳されてしまい、本人、または介助する職員が気付かず食事介助を行った場合、B様は嚥下機能が低下しているため、飲み込めない、飲み込んだ場合、誤嚥してしまうと言うことです。
誤嚥は窒息から呼吸停止に至ることもあり、命に関わるリスクが高く、上記は介助中の事故にあたります。
速やかに事故報告書を作成して、事故の内容、事故の原因と、今後の対策・取り組みを検討し、全職員に周知をしましょう。
事故報告、事故報告書については新たに記事にしますが、事故報告書で大切なことは同じ事故を二度と起こさない為には、どうしたら良いのかを検討し、業務の改善を図ることです。

概ね施設で提供できる食事形態
主食 | 常食 軟飯 全粥 7分粥 5分粥 粥ミキサー 粥ペースト ソフトなど |
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副食 | 常菜 軟菜 一口大 粗刻み 刻み 超刻み ミキサー ペースト ソフトなど |
制限食 | 塩分制限 カロリー制限 脂質、糖質制限 タンパク質制限など |
禁食 | 持病によっては摂取してはいけない食品があります |
備考 | 食前に血糖値を測定したりインシュリン注射が必要な利用者がいます。また、水分や汁物にとろみ材が必要な方もいらっしゃいます。 |
ご利用者様の適切な食事形態とミールラウンドについて
年を重ねていくと、少しずつ咀嚼機能(そしゃくきのう・食物を噛み砕く機能)や嚥下機能(えんげきのう・飲み込む機能)が低下してきます。
食べるために必要な筋力の低下や、様々な病気から頬や舌や喉、首の動きが悪くなる身体的な機能低下や、口腔内に入った食物を飲み込める大きさに噛み砕いたり、口腔内にある食物を舌で纏め、口腔内の奥へ移し、飲み込むことを認知する機能が低下したり、食事中、強く咽せてしまったりすることで食事は苦しいものと認識してしまい、食べること自体が嫌になってしまう方もいます。
また、適切なお食事の形態についてですが、誤嚥が心配だからと不必要に刻み過ぎたり、トロミ剤を付け過ぎたりすることで、噛む、飲み込む機能低下に繋がります。
大切なことは、お客様お一人お一人に、適切なお食事形態でのお食事をご提供することです。
温も冷もダマになりにくいとろみ剤 |
ミールラウンドについて
医師、歯科医師や歯科衛生士、管理栄養士、看護師、介護職員、生活相談員、介護支援専門員他、担当するスタッフが、お食事に関する環境を観察して、ご利用者様にとっての適切なお食事形態を含めて、様々な角度から検討、評価し、いつまでもお口から美味しく食事が摂れるように支援しています。
退院後等、食事形態が全粥や刻み食となっていても、徐々に嚥下機能が改善することがあります。現在の食事形態が適切かどうかの評価(ミールラウンドやVE検査)ができないか担当のケアマネジャーに相談してみてください。検査・評価が施設内で実施できる訪問歯科サービスも多くあります。
ミールラウンド(meal round)とは
医師,歯科医師,管理栄養士,看護師,歯科衛生士,介護支援専門員その他の職種の者が,認知機能や摂食嚥下機能の低下を伴う施設入所者に対し,机や椅子の高さなどの食事の環境,食事の姿勢,食事のペースや一口量,食物の認知機能,食具の種類や使用方法,食事介助の方法,食事摂取量,食の嗜好を観察し,カンファレンスなどを行い入所者ごとに経口摂取の維持支援の充実を図ること。
「多職種による食事の観察評価」ともいう。
平成27年度の介護報酬改定では,経口維持加算の要件を変更して経口摂取の維持支援を充実させる観点より,多職種によるミールラウンドやカンファレンスなどの取り組みのプロセス,および咀嚼能力などの口腔機能を踏まえた経口維持のための支援を評価するようになった。引用:日本老年歯科医師会 老年歯科医学用語辞典 追加用語
食事とは単に栄養を補給するだけではなく、味わう楽しみは、生きていくための生活の質の向上に繋がります。


この記事の終わりに
例え話をしますが、工場などでお勤めの方が、会社の商品を誤って壊してしまった場合、職場から始末書の提出指示があったり、壊した商品が高額な物だったりすると更に落ち込みますね。後悔し、深く反省することになると思います。
介護のお仕事ではどうなるのかと言いますと、先ず、相手は商品や物ではなく、血の通った人、人間です。介護施設に入居されているということは、何かしらの介助が必要な方であり、不適切な介助は、命に関わる危険と隣り合わせです。
ポケットにお客様のコールを受けるPHSだけではなく、自身のスマートフォンを持って、業務を行う職員を見掛けることがありますが、業務中の使用はNGです。
目が離せない見守りが必要なお客様が、フロアに何名かはいると思いますが、介護のお仕事中は業務に集中しましょう。介護現場に個人のスマートフォンは不要です。休憩時間や終業後にゆっくり楽しんで下さいね。

「ちょっと見るだけ」の数秒であっても、事故が起きてからでは遅いです。数年前、スマホゲームを車を運転中に操作中、交通事故となり実際に亡くなった方がいらっしゃいましたが、同じことですね。被害者のみならず、加害者だけでなく、その家族にとっても辛いことです。お互いに気を付けましょうね。