施設の介護

介護事故報告書の必要性を正しく理解して再発を防止しよう

※ 当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

皆さん、こんにちは。今日は土曜日ということで、お休みの方も多いのではないでしょうか。めぐろの介護新聞にお越し下さいまして誠にありがとうございます(*^-^*)

皆さんは、「介護事故報告書」と聞くとどのようなイメージがありますか?良いイメージはないと思いますが、悪いこと、危険なことが起きてしまい、始末書のような反省文のような…イメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。介護のお仕事をされている方なら一度は書いたことがあると思いますが、今回は「介護事故報告書」についてを記事にします。

  1. 始末書と介護介護事故報告書の違い
  2. 何故、事故報告書を書く必要があるのか
  3. 事故報告書は誰が書くのか
  4. アクシデントレポート、インシデントレポートの違い

上記のような、介護現場において作成する事故報告書の必要性にまつわる疑問を解説していきます。

始末書と介護事故報告書の違いについて

始末書とはそもそもどういう書類?

始末書とは、お仕事をする中で、不注意などによる失敗を起こしてしまった際に、その失敗の内容を細かく記し報告することと、その失敗を反省、謝罪する意を書き示し再発しないよう誓約させたり、反省を促す為の書類です。

例えば、お店の店員さんが、謝って棚から商品を落として壊してしまった場合に、報告書の提出を店主に求められ、書く書類が始末書です。

商品が乗った棚をお掃除中、手が滑ってしまい商品を床に落として破損させてしまった経緯を書くことと、お店の商品を自分の不注意から破損させてしまったことに対する反省の意を文書にすることです。

介護現場で書く事故報告書はどのような書類でしょうか

では、介護現場で起きた事故を報告する書類についてはいかがでしょうか。

介護サービス中に起きた事故について、事故の内容、事故に至ってしまった原因、再発防止のための取り組みについてを時系列で書き示し、事故報告書を作成します。

つまり、始末書は不注意による失敗の内容を報告することと、本人の反省の意を文書にする為の書類であるとお話ししましたが、一方で、介護事故報告書とは、介護サービス中に発生した事故の内容を正確に時系列で書き示していきますが、何故事故に至ってしまったのか(事故の原因)、起こしてしまった事故を防止するためにはどうすればよいのか(再発防止の為の対策と取り組み)を書類にすることです。

りょうこ新人職員
りょうこ新人職員
なるほどです…。介護現場においての事故の報告って、施設長宛てに書く訳じゃないんですね
たろう先輩職員
たろう先輩職員
勿論、施設長は事故報告書を確認するけど、報告の内容は、施設長だけではなく、全職員が確認し理解することが大事なんだよ
ナースえみこ
ナースえみこ
その為にも、事故報告書は、誰が見ても解るように書く必要がありますね
めぐろ
めぐろ
りょうこさんはまだ、事故報告書を作成していないから解らないことも多いと思うけど、先ずは事故報告書を作成する必要性についてをインプットして下さいね。
りょうこ新人職員
りょうこ新人職員
ハイ!宜しくお願いします(^0^)/
配膳ミスによる事故

昼食を配膳する際、A様の常食を、普段はミキサー食を召し上がっているB様に間違えて配膳してしまいました。A様の食事がなく、B様の食事が残っていることに他の職員が気付き、急いでB様の元に向かいましたが、既にB様は本来召し上がる筈のミキサー食ではなく、A様の常食を数口召し上がった形跡がありました。幸いにもB様は咽せることもなく事なきを得ました。

介護事故報告書を作成する場合に大切なことは、何故、A様の食事をB様に配膳してしまったのかの原因を究明します。事故原因は、ひとつやふたつではないと思いますが、抽出した事故原因に対して、次に必要なことは、どうしたら同様の事故を起こさないように出来るのか(再発防止策)をフロアやユニットスタッフで検討していきます。対策や取り組み案ををスムーズに行う為に、具体的に必要となる業務内容を変更、改善します。

事故報告書は、書いたらお終いではありません。事故報告書は介護施設に設置している「事故防止委員会」「リスクマネジメント委員会」等の委員メンバーで再検討します。事故後のご利用者様はお変わりなくお過ごし頂けているのか、事故報告書を作成した際に取り決めた業務改善を実際に行い、同様の事故に至っていないのかを細かく評価していきます。そこで、新たな改善点が出ることも多く、再び後日委員会で再評価を行い、都度全職員に周知させます。

アクシデントレポート、インシデントレポートとは何か

事故報告書=アクシデントレポート

ご利用者様本人の失敗や職員のミスが原因で、利用者様が影響を受けてしまい、治療(病院受診)した場合を指します。

インシデントレポート

ご利用者様本人の失敗や職員のミスが原因で、利用者様が影響をうけてしまったが、治療(病院受診)には至らなかった場合を指します。

ヒヤリハット報告書

ひとつ間違えればインシデントやアクシデントとなってしまったが、施行前に間違えに気付き、事なきを得た。ご利用者様には何の影響も受けなかった場合を指します。

インシデントとヒヤリハットの違いについて

アクシデントレポート、インシデントレポートともに、事故報告書と呼ぶ施設もありますが、施設で働く介護職員であれば、事故報告書をアクシデントレポートといい、インシデントレポートをひやりハット報告と捉えて良いと思います

上記の文章で、何故、良いと思いますとはっきりしない文章なのかと申しますと、違いについては正式な取り決めがないからです。病院を含め、介護施設でもインシデントとヒヤリハットは別物と捉えている場合もあるからです。

例えば、先ほどお話ししたお食事の配膳ミスによる事故の場合、A様のお食事をB様に配膳してしまい、ミスに気付いた際に、既にB様は本来召し上がるはずである食事形態と異なる食事形態のお食事を召し上がってしまっていますが、B様の身体状況に変化はなく受診や治療などは行いませんでしたということですので、「職員のミスが原因で利用者様は影響を与受けましたが、治療(病院受診)には至らなかった」のであれば、インシデントレポートになりますが、それで良いのでしょうか。

ここは施設によって規定があり、インシデントレポートやヒヤリハット報告を行う場合もありますが、実際は、B様にA様の食事を配膳した時点でミスです。更にB様は実際に数口であっても通常召し上がるべき食事ではない食事を召し上がっています

たまたま、B様は誤嚥せずに済みましたが、誤嚥、窒息、嚥下性肺炎等に陥る可能性があり、吸引等の処置や救急搬送となってもおかしくない事故だと考えます。これは、事故報告書の提出が必要だと考えますがいかがでしょうか。

めぐろが働く施設では、この食事配膳ミスによる事故は、事故報告書の提出をします。例えば、B様にA様のお食事を配膳した時点で、配膳した職員、または他の職員が気付き、B様が食事を召し上がることなく正しいお食事を配膳し直したならヒヤリハット報告の提出となっています。このあたりは各施設によりルールがあると思いますので、確認してみて下さいね。

ヒヤリハット報告を事故防止に繋げよう6月に入って蒸し暑くなってきましたね。外出時のマスク装着で、既にバテ気味のめぐろでございます。めぐろの介護新聞にお越し頂きありがとうござ...

何故、介護事故報告書を書かなければいけないのか

同じような事故を二度と起こさない為(再発防止)

事故報告書を作成するうえで大切なことは、どのような事故がいつ起きたのか。何故起きたのか。再び同じ事故を起こさないようにする為に、必要な対策は何か等、発生した事故を分析することです。施設全体が施設内で発生した全ての事故の詳細を、事故報告書で確認し、共有することが大切です。

再発防止の為の業務の改善

事故の再発を防止するための対策や取り組みを速やかに実施するために必要な業務の改善を図ることが大切です。「以後、気を付けます」ではなく、スムーズに事故なく昼食を配膳するために、昼食時の職員の配置を増やす、職員の休憩時間を調整する等明確な業務改善を図ります。業務の改善は、ご利用者様に対するケアの向上、看護、介護職員の質の向上に繋がります

介護事故報告書を残すことで職場を、職員を守る

配膳したA様のお食事がB様の食事だったという事故発生から、その時のご利用者様の状態、受診が必要になった場合は、ご家族様への第一報から、受診した時間や病院での検査の内容、検査結果、処方されたお薬の内容、ご家族様へのご報告と謝罪、その後のご利用者様の状態を詳細に記録に残します。また、事故発生前のご利用者様の様子から、事故に至った詳細の内容と共に必要なことは、時系列で記録することです。施設や職員の対応を記録(事故報告書)に残すことで、のちに問題となった場合、事故報告書が証拠となり、施設や職員を守ることにも繋がります

事故はその時問題なくても、後になって急変することがある

高齢者の場合、その時は痛みの訴えや外傷がなくても、時間が経ってから急変することが多くあります。「こんなに元気だし、大丈夫でしょう」という曖昧な考えで、ご家族様への報告を怠ったり、報告書の作成を怠ってしまった場合、後々「事故を隠した」ということになり兼ねません。施設とご利用者(ご利用者家族)との信頼関係が崩れるだけではなく、その不信感から訴えられた場合、確実に不利になります

現在の状況をお伝えする大切さ

小さな事故でも、事故報告書の作成や看護、介護記録に詳細を記録に残すことが大切です。

報告についてですが「この程度のことでお仕事中のご家族様に連絡をして迷惑にならないかな。」と、報告に悩むこともあると思いますが、後々のことを考えるとやはりお伝えすることをおすすめします。

こんな小さな事故でもきちんと報告がある施設」と施設への信頼を深めることにもなります。報告する内容や連絡方法については、あらかじめ、ご家族様と相談しておくと良いですね。事故に限らず、体調不良等のご家族様への連絡方法を決めておくとスムーズです。

ご家族様により、微熱程度でも報告を希望される方や、受診の必要がある場合のみ、仕事中でも連絡を下さい等、様々です。重要度によっては、メールでのご報告も活用できます。

介護事故報告書は誰が作成しますか

ここまでお話ししてきました通り、事故報告書は、発生した事故の全容を明らかにするために、嘘、偽りなく正確に書く必要があります。

必要なことは、事故の内容の詳細であり、「誰がどんな失敗をした」の「誰が」を特定するための物ではありません。当事者や発見者が書く理由は、その事故の一部始終を目撃していたり、事故現場を発見したことから事故の内容を他の職員より認識できているからであり、反省しなさいと促したり責めたりするためのものではありません

行政報告が必要な事故があります

引用:東京都目黒区

事故の範囲

原因などが次のいずれかに該当する場合

  • 身体不自由または認知症等に起因するもの
  • 施設の設備等に起因するもの
  • 感染症、食中毒または疥癬(かいせん)の発生
  • 地震等の自然災害、火災又は交通事故
  • 職員、利用者又は第三者の故意又は過失による行為及びそれらが疑われる場合
  • 原因を特定できない場合

次のいずれかに該当する被害又は影響を生じた場合

  • 利用者が死亡、けが等、身体的又は精神的被害を受けた場合
  • 利用者が経済的損失を受けた場合
  • 利用者が加害者となった場合
  • その他、事業所のサービス提供等に重大な支障を伴う場合

参考:東京都目黒区の事故報告書様式(Excel:38KB)

介護事故報告書作成に書くべき項目

(行政報告の場合)

1 報告者 事故を報告する事業所、報告者の情報(法人名、事業所名、事業所番号、事業所所在地、電話番号 管理者名、記載者名、サービス種別
2 利用者 対象者(ご利用者様)の情報(住所、氏名、性別、生年月日、年齢、要介護度(既往歴)、介護保険被保険者番号、保険者
3 事故の概要

事故発生日時、事故発生場所、事故の概要、事故原因

4 事故時の対応 治療した医療機関名、医療機関住所、医療機関電話番号、担当医氏名治療の内容、治療の結果、家族への連絡状況
5 事故後の対応 ご利用者様の状況、損害賠償等の状況、再発防止に向けた今後の対応

行政報告時は、利用者様の保険者を確認して下さい

行政によって事故報告や報告書の提出が必要な範囲が異なります。神奈川県横浜市の場合、誤薬に関わる事故も事故報告書の提出範囲に含まれますが、東京都目黒区では誤薬に関わらず利用者様の生命や、怪我など身体的または精神的被害を受けた場合となっています。

(施設向け事故報告の場合)

  1. 1記入日
  2. 2記入者
  3. 3発生日時
  4. 4利用者情報
  5. 5発生場所
  6. 6発生時の状況
  7. 7事故の内容
  8. 8事故後行った対応
  9. 9家族、関係機関への対応
  10. 10事故の分析、対策・取り組み

 

事故の分析は複数名で考えよう

施設用の事故報告書を作成する場合、1~8までを当事者、第一発見者が書きます。

10については発見者のみならず、介護リーダー他介護職員も書いても問題はありません。

7.8.10については搬送や受診となった場合も含めて、看護師も追記します。

9については、管理者、ケアマネジャー、施設相談員が書きます。

事故報告書は当事者や発見者しか解らない内容以外は、フロアやユニット職員複数名で話し合い、事故を分析し対策や取り組みを検討します

目の前で起きる事故(発生)と、事故に遭遇、(発見)することがある

施設介護現場で起きる事故について、介護中の事故は事故の発生を目撃することになりますので、事故内容は正確なものになります。お仕事中に、突如事故に遭遇する場合も多くあります例えると、ご利用者様の居室に訪室した際に、床に転倒されているご利用者様を発見することもあるということです。

何が言いたいのかといいますと、ご利用者様のお部屋に伺った際に、転倒している利用者様を発見した場合、転倒の現場を目撃していませんので、事故報告書には見たままを書くことになります。見たことをそのまま書類に残すとは、どのようなことなのかと申しますと以下になります。

  • 居室内のどこで、どのような体位で、どの方向を向いて転倒しているのか
  • お客様の意識はあるのか、対話は出来るのか
  • 痛みはあるのか、出血他外傷はないのか
  • 靴ははいているのか。衣類(特に下衣)が整っているか。
  • 福祉用具(車椅子や歩行器、杖など)はどうなっているのか

など詳細を発見時の状況として、報告書に残すことになります。その状況からどのような経緯で転倒したのかを推測し、再発予防や対策、取り組みを検討することになります。

介護事故報告書は反省文や感想文ではありません

介護事故報告書に「申し訳ありません」や「私は~だと思います」などの反省文や感想は不要です。大切なことは事故内容の詳細を時間を含めて正確に残すことです。

どうして?

そうですね。二度と同じ事故を起こさない為の再発防止の為の分析であり、ひとつの事故を施設全体で共有し、業務の改善を図るためであり、施設や職員が行った行為を証明するためです。それが、訴訟などの問題になった際、情報を開示することで施設や職員を守ります。

この記事の終わりに

今回は、「介護事故報告書とは何か」「介護事故報告書の必要性」についてを深掘りしてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

介護施設は、病院のように治療をする場ではなく、生活の場です。身体拘束ゼロを貫いている施設が多くあります。

「転ぶから立たないで下さい」「転ぶから車椅子を使用して下さい」「立位が不安定なのでトイレで転ぶリスクが高いです。おむつにしましょう」等、ご利用者様の「やりたいこと」を奪うことで事故を減らそうと考える方はいませんか?施設に限らず、在宅介護でも同様のことが言えますね。

例え、認知症を患っていても、理由があって立ちます。理由があって歩きます。支援があれば、トイレで排泄出来るのであるならば、私は介助をしたいです

一方、歩行中の転倒、骨折、手術と、歩行をすることで、ご利用者様に痛い思いをさせてしまうことになります。私達、介護施設は、ご利用者様に安全に、安楽に、ご生活頂くためにケアプランに沿い、担当するスタッフ全員で連携して事故がないように、日々、看護、介護を行っていますが、事故が起きるリスクについてをご利用者様本人、ご家族様にきちんとお話しさせて頂き、ご利用者様やご家族様のご意向(ニーズ)に可能な限り沿いたいと思っています。

りょうこ新人職員
りょうこ新人職員
あの…めぐろさん。誰とお話ししているんですか?
めぐろ
めぐろ
わわ…ごめんなさい(汗)独り言です(;゚ロ゚)
たろう先輩職員
たろう先輩職員
( *´艸)( 艸`*)ププッ。りょうこさん!ナイスです(笑)

今回は、報告書の必要性についてを記事にしましたが、今後、実際に「事故報告書の書き方」や「介護記録について」記事にする予定です。長くなりましたが、お読み下りありがとうございました。

関連記事